三菱UFJフィナンシャルグループ傘下の銀行と証券2社が顧客の同意を得ずに顧客情報を共有していた問題で、金融庁は金融取引法に基づく改善命令を出しました。
改善命令の対象になったのは、三菱UFJ銀行、三菱UFJモルガン・スタンレー証券、モルガン・スタンレー三菱UFJ証券であり、3社ともに再発防止に向けた改善計画の提出を義務付けられました。
今回の件を巡って、大きく問題視されている事は2つありますが、1つ目が、同グループである銀行と証券会社間の顧客情報共有を制限する「ファイアウオール(FW)規制」違反、2つ目が、銀行には認められていない有価証券の勧誘行為になります。
具体的には、証券会社2社は、顧客企業の同意を得ていないにもかかわらず、銀行側から複数の取引先企業の経営戦略に関わる非公開情報を得ており、三菱UFJ銀行は顧客企業に対し、グループの証券会社との取引を条件に、顧客企業に対して貸出金利を優遇すると提案するなどの行為があったとみられていますが、今回の一連の事案では、銀行という立場を活かしながら顧客に不当な取引を迫る「優越的地位の乱用」は認定されませんでした。
欧米ではグループ内の顧客情報共有が制限されておらず、日本おいてもメガバンクが規制緩和を主張してきました。FW規制の緩和は、協調融資の組成や社債発行など企業の財務状況に合わせたサービスの提案がしやすくなり、多くの企業には資金繰りを改善するための手段が増える規制緩和になる一方、法令に則った運用を銀行側が行う必要があります。
今回のような法令違反は規制緩和に対してネガティブな影響を与えかねない為、情報管理体制の見直しや、グループ内全体のコンプライアンス意識を高めることが求められます。