厚生労働省は、2023年の仕事によってうつ病などの精神障害を発症し、労災認定を受けた
のは前年より173件増加し、883件だったと発表しました。この件数は統計を始めた1983年以降最多であり、これで5年連続の最多更新となったようです。
原因別でみると、一番多かったのが、「パワハラ」で前年より10件増加して157件、2番
目が「悲惨な事故や災害の体験や目撃」で111件、次いで「セクハラ」が103件、「仕事内
容や仕事量の大きな変化」が100件と続いたようです。また、業種別では「社会保険・社会
福祉・介護」112件、「医療」105件、「総合工事業」57件でした。
また、2023年9月に精神障害による労災の認定基準が改正され、原因項目に追加されたカ
スタマーハラスメント(カスハラ)による労災は今回の初集計で52件となりましたが、う
ち45件は女性で、顧客から迷惑行為の標的にされやすい傾向を示す結果となりました。
近年は、顧客による「カスタマーハラスメント(カスハラ)」が、企業間で発生する例が
注目を集めており、営業担当者が顧客企業から暴言を吐かれる、脅されるなどで、民事訴訟
に発展するケースもあります。
具体的には、被害者から加害者に対する民法の不法行為に基づく損害賠償請求以外に、被害
者の勤務先企業に対して労働契約法の安全配慮義務違反に基づく損害賠償請求や、加害者の勤務先企業に民法の使用者責任等に基づく損害賠償請求が行われる可能性があります。
個人客からの悪質なクレームに比べると、企業間でのやりとりは表面化することが少ない傾向にありましたが、今後は価格や納期などの取引条件を巡るビジネスにおける交渉においても注意が必要になるでしょう。